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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)317号 判決 1983年1月31日

主文

一  被控訴人山中久三郎に対する本件控訴に基づき、原判決中、同被控訴人に関する部分を次のとおり変更する。

1  控訴人は被控訴人山中久三郎に対し、金八二万五八〇七円及び内金七四万五八〇七円に対する昭和四八年四月一五日から、内金八万円に対する昭和五三年七月一六日から、各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人山中久三郎のその余の請求は、いずれもこれを棄却する。

二  被控訴人山中義夫、同山中八重子の本件附帯控訴に基づき、原判決中、同被控訴人らに関する部分を次のとおり変更する。

1  控訴人は、

(一)  被控訴人山中義夫に対し金六一四万一九五一円及び内金五七二万六九五一円に対する昭和四八年四月一五日から、内金四一万五〇〇〇円に対する昭和五三年七月一六日から、各完済に至るまで年五分の割合による金員を、

(二)  被控訴人山中八重子に対し、金五九五万五六六七円及び内金五五八万六六七円に対する昭和四八年四月一五日から、内金三七万五〇〇〇円に対する昭和五三年七月一六日から、各完済に至るまで年五分の割合による金員を、

それぞれ支払え。

2  被控訴人山中義夫、同山中八重子のその余の請求は、当審における拡張請求を含め、いずれもこれを棄却する。

三  被控訴人山中健靖、同山中義夫、同山中八重子に対する本件控訴、及び被控訴人山中久三郎、同山中健靖の本件附帯控訴をいずれも棄却する。

四  原・当審における訴訟費用のうち、控訴人と被控訴人山中久三郎との間に生じた分は、同被控訴人の附帯控訴により生じた費用を除き、これを通じて七分し、その一を控訴人、その余を同被控訴人の各負担とし、控訴人と被控訴人山中義夫、同山中八重子との間に生じた分は、同被控訴人らに対する控訴により生じた費用を除き、それぞれにつき、これを通じて五分し、その二を同被控訴人らの、その余を控訴人の各負担とし、当審における訴訟費用のうち、被控訴人山中健靖、同山中義夫、同山中八重子に対する控訴により生じた分は控訴人の、被控訴人山中久三郎、同山中健靖の附帯控訴により生じた分は同被控訴人らの各負担とする。

事実

控訴人代理人は「(一)原判決中、控訴人敗訴の部分を取消す。(二)右取消にかかる部分について、被控訴人らの請求を棄却する。(三)被控訴人らの附帯控訴及びこれに基づく被控訴人義夫、同八重子の拡張請求をいずれも棄却する。(四)訴訟費用は第一、二審とも全部被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は「(一)本件控訴を棄却する。(二)附帯控訴に基づき、原判決主文第一、二項を『控訴人は、<1>被控訴人久三郎に対し、金五九〇万九二三六円及び内金一九〇万九二三六円に対する昭和四八年四月一五日から、内金四〇〇万円に対する昭和五三年七月一六日から、各完済に至るまで年五分の割合による金員を、<2>被控訴人健靖に対し金二八万一〇七三円、同義夫に対し金一〇五六万二五〇五円、同八重子に対し金一〇二七万一二一〇円、及びこれらに対する昭和四八年四月一五日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。』と変更する。(三)訴訟費用は第一、二審とも全部控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張は、当審における被控訴人義夫、同八重子の主張の変更及び請求の拡張に伴い、原判決一〇丁裏八行目の「金五八六万九六七三円」を「金七八八万一二一〇円」と、同末行の「昭和五一」を「昭和五五」と、同一一丁表二行目から三行目にかけての「金一三九万七二〇〇円」を「金一八三万四八〇〇円」と、同末行の「金一一七三万九三四六円」を「金一五七六万二四二一円」と、同裏四行目の「金五八六万九六七三」を「金七八八万一二一〇」と、同一二丁裏二行目の「金七七五万九六七三円」を「金九七七万一二一〇円」と、同三行目の「金八二五万九六七三円」を「金一〇二七万一二一〇円」と、同一四丁表三行目から四行目にかけての「金七七五万九六七三円」を「金九七七万一二一〇円」と、同五行目の「金八五五万九六八円」を「金一〇五六万二五〇五円」と、同裏一行目の「金八五五万九六八円」を「金一〇五六万二五〇五円」と、同一行目から二行目にかけての「金八二五万九六七三円」を「金一〇二七万一二一〇円」と、それぞれ改めるほかは、同判決の事実摘示と同じであるから、これを引用する。

証拠関係は、記録中の各書証目録・証人等目録記載のとおりである。

理由

一  当裁判所は、控訴人は本件事故により被控訴人らに生じた人的、物的損害についての賠償責任を免れず、この点についての消滅時効の成立は認めがたいが、虚偽の供述をしたことを前提とする控訴人の被控訴人久三郎に対する損害賠償責任はこれを肯認できない、と判断するものであつて、その理由は、以下のとおり補正するほか、原判決理由第一ないし第三項の説示(原判決二一丁表二行目から三四丁裏六行目まで)と同じであるから、これを引用する。

1  原判決二七丁裏七行目の「被告本人尋問」を「原・当審における控訴人本人尋問」と、同末行の「旨の」を「などという右認定に反する」と、各改める。

2  同二九丁表一行目の「結果」の次に「(原・当審)」を、同裏九行目の「後記損害」の前に「物損を除く」を、それぞれ付加する。

3  同三〇丁裏七行目の「しかしながら、」から同三一丁裏末行までを次のように改める。

「そして、右各供述が本件事故の態様に関する前記認定の事実に合致しないことは明らかである。

しかしながら、第一次衝突時から控訴人車及び被控訴人車が対向車線側の田に転落するまでの間に、控訴人車が被控訴人車より前方に出た(控訴人車が被控訴人車より先行した)瞬間があつたことは同認定の事実関係からも肯認できるうえ、本件事故が激しい降雨中の瞬時の出来事であつたことを考慮すると、控訴人が先行する自車に被控訴人車が追突したと錯覚することも充分に考えうることであり、第一次衝突の態様だけからみて、直ちに、控訴人が自己の認識に反して、あえて虚偽の供述をしたとまでは断じがたいところ、他に控訴人が故意に虚偽の供述をしたものと認めるに足りる証拠はない。

そうすると、その余の点を検討するまでもなく、この点に関する控訴人の不法行為責任を認めることはできないものといわざるを得ない。」

4  同三二丁表五行目の「主張し、」から同一〇行目までを削除し、同裏八行目の「困難であること、」から同三三丁表三行目までを次のように改める。

「困難であるから、被控訴人久三郎は、右無罪判決の確定によりはじめて、控訴人に対する賠償請求が事実上可能の状況のもとに、その可能な程度に控訴人が加害者であることを知つたものというべきであり、したがつて、同判決確定時をもつて民法七二四条にいう「加害者ヲ知リタル時」に該当すると解するのが相当であるところ、被控訴人久三郎が昭和五三年七月一一日に本件訴を提起したことは記録上明らかであるから、同被控訴人について控訴人主張の消滅時効の成立を認めることはできない。」

5  同三三丁表九行目の「前記(一)」を「前記1」と、同末行の「被告が」から同裏二行目までを「被控訴人健靖についても控訴人主張の消滅時効の成立を認めることはできない。」と、各改める。

6  同三四丁表一行目の「無罪判決が出」の次に「、同判決が確定し」を加え、同七行目の「のあつた昭和五三年二月二七日」を「が確定した昭和五三年三月一四日」と、同裏五行目の「前記(三)」を「前記3」と、各改める。

二  本件事故により被控訴人らが被つた損害及びその填補についての当裁判所の判断は、以下のとおり補正するほか、原判決理由第四項の説示(原判決三五丁表一行目から四七丁表四行目まで)と同じであるから、これを引用する。

1  原判決三七丁裏一〇行目から同三八丁裏六行目までを削除し、同七行目冒頭の(一〇)を(八)と改め、同一〇行目末尾の「し、」から同三九丁表一行目の「支払を約」までを削り、同三行目「金四〇万円」を「金八万円」と、同五行目冒頭の「(二)」を「(九)」と、同九行目の「であり、」から同裏一行目の「四一四万五八〇七円」までを「に、右(八)の弁護士費用金八万円を加えた金八二万五八〇七円」と、それぞれ訂正する。

2  同四〇丁裏一〇行目の「、着手」から末行の「支払つ」までを削除する。

3  同四一丁裏一〇行目冒頭から同末行の「基礎とし、」までを削除し、同四二丁表三行目の「金七〇六万七七三六円」を「金九二八万一三三五円」と、同五行目の計算式を「1,834,800×(1-0.5)×(18.9802-8.8632)=9,281,335.8」と、同九行目から一〇行目にかけての「金三五三万三八六八円」を「金四六四万六六七円」と、同裏二行目と三行目の「金五〇万円」をいずれも「金三〇万円」と、同末行の「各金三五〇万円」を「各金三〇〇万円」と、同四三丁裏六行目から七行目にかけての「金七〇三万三八六八円」を「金七六四万六六七円」と、同八行目の「金四六七万三八六八円」を「金五二八万六六七円」と、同九行目の「金五〇四万八八六八円」を「金五六五万五六六七円」と、同末行の「金七五三万三八六八円」を「金七九四万六六七円」と、同四四丁表一行目の「金五一七万三八六八」を「金五五八万六六七」と、同三行目の「五五四万八八六八円」を「五九五万五六六七円」と、それぞれ改める。

4  同四六丁裏一行目の「、成功報酬」から二行目の「支払を約し」までを削除し、同四七丁表三行目から四行目にかけての「金五五三万五一五二円」を「金六一四万一九五一円」と改める。

三  以上によれば、被控訴人らの本訴請求は、本件事故に基づく損害の賠償として、控訴人に対し、被控訴人久三郎において金八二万五八〇七円、同健靖において金二〇万三〇七三円、同義夫において金六一四万一九五一円、同八重子において金五九五万五六六七円、及び前認定の各弁護士費用を除くそれぞれの内金に対する本件事故発生の日である昭和四八年四月一五日から、右各弁護士費用相当額に対する本件訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和五三年七月一六日から、いずれも完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、認容すべきであるが、被控訴人義夫、同八重子の当審における拡張請求を含む被控訴人らのその余の請求はすべて失当として排斥すべきことになる。

したがつて、これと結論を一部異にする原判決中の被控訴人久三郎に関する部分は、同被控訴人に対する本件控訴に基づき、同じく被控訴人義夫、同八重子に関する部分は、同被控訴人らの本件附帯控訴に基づき、それぞれ右の趣旨に変更されるべきであるが、被控訴人健靖、同義夫、同八重子に対する本件控訴、及び被控訴人久三郎、同健靖の本件附帯控訴はいずれも理由がないものとして棄却を免れない。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、九六条、八九条、九二条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 鰍澤健三 枇杷田泰助 尾方滋)

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